皆がすっかり夏服に衣替えした頃、彼女は母親と二人で教室を訪れた。
手には進研模試の結果。
高校3年生、偏差値32。
第一志望は国公立大学だと言う。
正直、その道のりは簡単ではないと思った。
入塾後、まず始めたのは数学の個別指導だった。
学校の定期テストでは欠点が続いていたからだ。
指導をしてすぐに分かった。
彼女の点数が伸び悩む原因。
それは、そもそも公式をほとんど覚えていなかったからだ。
「数学は暗記科目ではない」という言葉だけが独り歩きし、
“覚えなくてもいい教科”だと思ってしまっていたのかもしれない。
だが実際は、公式を知らなければ考えることすら難しい。
公式とは、ただ丸暗記するための記号ではない。
考えるための道具であり、答えへ辿り着くための地図だ。
個別指導を通して、彼女はそのことを少しずつ理解していった。
すると数ヶ月もしないうちに、成績は目に見えて伸び始めた。
だが、受験は甘くない。
一科目だけ伸びれば乗り越えられるほど、簡単な世界ではない。
秋。
今度は英語が壁になった。
数学から英語へと個別指導を切り替え、最初に行った英単語テスト。
あの大量の×印を今でも覚えている。
もちろん、どんな生徒でも週2時間の授業だけで合格へ導けるわけではない。
大切なのは、その授業を迎えるまでに、どれだけ自分と向き合えるかだ。
毎回、彼女に宿題を出した。
指定した範囲の英単語を覚えてくること。
過去問を解いてくること。
間違えた理由を、自分の言葉で説明できるようにすること。
彼女は、それを愚直なまでにやり続けた。
後から理由を聞くと、
「怒られたくなかったので。先生怒ったら怖そうだし!」と笑っていた。
でも、それでいいのだと思う。
人生を変える上で、才能以上に大切なものがある。
それは、「素直であること」だ。
成績が伸び悩む時、人はどうしても自分のやり方だけに頼ってしまうことがある。
だが、本当に伸びる生徒は、「まずやってみます」と言える。
教えられたことを、まずは素直にやってみる。
その積み重ねが、少しずつ人を変えていく。
彼女は成績を伸ばし続け、本番まで一度も大きく崩れることはなかった。
そして共通テスト本番では、7割を超える得点率。
あの夏、偏差値32だった彼女とは、まるで別人のようだった。
勉強と向き合うことに自信を持てなかった彼女が、
いつの間にか真正面から学問に向き合うようになっていた。
そして彼女は、第一志望の国立大学に合格した。
高校卒業後、久しぶりに再会した大学生の彼女は、こう言った。
「私はポールスターに入ってから、少しずつ人生が変わったんです。
高校2年生までは、未来に希望なんてなくて。
なんとなく行ける大学に進学して、なんとなく働くんだろうなと思っていました。
でも、そんな未来を想像した時、本当に悔しくて。
このままだと一生後悔するかもしれないと思って、塾の扉を叩きました。
私を信じてくれてありがとうございました。」
あの日、勇気を出して塾の扉を叩いた彼女のように。
今、人生を変えたいと思っている誰かを、ポールスターは待っています。


